いきなりはじまる

まず、幼児期から超多動で、ちょっとお母さんが目を離した隙に、いなくなってしまう子がいます。このタイプの場合、お母さんもある程度心構えができているとは言え、とてもスペシャルな育児を経験することになります。Aくんは、お家を飛び出し、近所の家の換気扇を見て歩くのに、こだわりました。お母さんは、その都度わが子の後を付いてまわりました。今は成人して、律儀な青年になって働いています。
Bくんは、逆に外へ出かけたがらないようなおとなしいタイプ。ところが、小学2年生の時、お母さんを探して、県立中央病院までおでかけしたことがありました。今まで、飛びだしたのは、この一回だけだそうです。
 AくんBくんに共通するのは、本人の飛び出し、お出かけの目的がはっきりしていることです。ならば、周囲は本人の目的を理解して、とことんつきあうべきです。目的がはっきりしているならば、こちらも対処しやすい。ここで、しつけがどうの、安全がどうのという理由で、私たちが本人の目的を遮断する事は、決して、得策ではありません。自閉症児は、その認知の特性上、目的を持った行動がとれるようになれば、そこを足がかりとして、次のステップに進むことができますし、やがてこの世の仕組みをより理解しようと考えるようになるからです。
 問題は、目的がはっきりせず、しかも、ある時期から突発的に飛び出し、おでかけするタイプです。それは、いきなりはじまります。